本作を最後に、宮崎駿監督は
長編アニメーションから引退ということなので、
遺作と言えるでしょう。
そして本作は、例えるならば、「宮崎駿ジブリの葬式会場」です。
過去のジブリ作品にほとんど触れていないであろう子供たちにとっては、
遠い親戚の葬式のようなもので、
退屈の余り途中で寝てしまうこともあるでしょう。
また、これまでのジブリ作品のエンターテインメント性を
求めて視聴した方にとっては、テーマパークに来たと思ったら、
そこは葬式会場だったということになるので、楽しめるはずがありません。
本作には、空を自由に飛ぶことに対する果てなき想い、
理想だけでは済まされない厳しい現実がそこにはあるという、
さながら創作活動の苦悩、
宮崎駿監督の理想の女性像、
そして、自然だけでなく生活習慣や人も含めた
今では失われてしまった古き好き日本の美
というような宮崎駿監督自身が映像化したいと思ってきたことすべてが
詰まっているように思えます。
「最後くらい好きなように撮らせてくれ。
分かる人だけ分かってくれればいいよ」
というメッセージは確実にあると思います。
我々視聴者は、
本作を視聴して「あ〜この場面はあの作品を思い出すな〜」と
故人を偲ぶような視聴姿勢が、あるいは求められているのかもしれません。
本作の主題歌「ひこうき雲」が流れた時に、
「宮崎駿監督、これまで素晴らしい作品を届けてくれてありがとうございました」と言えたのならば、その人はきっと本作を楽しめたと思います。