普通アニメでは扱い辛い様々なテーマに切り込んだ、極めてメッセージ性の高い作品です。
その中でも特に大きく取り上げられているのが「環境問題」であり、我々が当然に享受している現代生活が、どれだけ自然に反したものであるかを痛切に訴えかけています。
それ故に、このアニメを「説教臭い」と感じてしまう視聴者も多いことでしょうが、この作品の魅力的なところは、「だから自然を守りましょう」という単調なメッセージに留まらないところです。
この作品を貫く柱にして枢要たるメッセージは、かのソクラテスや孔子も言及した哲学的命題、すなわち「無知を知れ」ということでしょう。
私達は、自分の知らないことを知った気になり、または知らないことを意識せずに生きてはいないでしょうか。
自分の生活がどのように成り立っているのか、どれだけ知っているでしょうか。
自分の身体が何から出来ているか、どれだけ意識しているでしょうか。
自分の幸福にとって本当に必要なものは何か、どれだけ把握できているでしょうか。
自分の言葉に込めた想いがどの程度相手に伝わり、相手の言葉に込めた想いをどの程度正確に受け取れているのか、どれだけ理解しているでしょうか。
虫の群れや菌の群れを「気持ち悪い」と感じるのは本当に当然でしょうか。
胎児に意思がないことは、生まれた赤ん坊が泣き喚くことは当然でしょうか。
勉強とは、単に知識を頭に詰め込む作業を表す言葉なのでしょうか。
このアニメは、こうした多くの人々が「当然」のこととして深く考えることなく受け入れてしまっている種々な事柄について深く追及することで、私達に「常識」を見つめ直す機会を提供してくれているのです。
登場人物の言葉の意味をよく考え、何が伝えたいのかを考察しながら視聴することによって、昨今急増しているライトなアニメからは決して得られない本質的な意味での「気付き」を得ることが出来ることでしょう。
また、本作はよく娯楽性の低さが指摘されますが、三角関係を含んだ恋愛模様など若者向けの内容も多く含むため、他の硬派な社会派アニメに比べると年代問わずに楽しめる作品となっていますので、是非一度視聴してみることをお勧めいたします。