心理サスペンスの傑作という世間の評価とともに、元祖「シリアスな笑い」としてネット上でも確固たる地位を築き上げた人気作。
死のノートの存在こそあれど、実際は顔の見えない犯人を追うサスペンス仕立てで、おなじく漫画原作からドラマ化した『ブラッディ・マンディ』と比べるとほとんど飛び道具なし。あっちも敵幹部のコードネームが神話由来だったりとなかなかのネタっぷりだが、なお追随を許さない『デスノ』の人気は笑える。痕跡を残さずハッキングするのが『ブラマン』、ノートに名前を書いてポテチを食べるのが『デスノ』。やってることは一緒。たぶん。
序盤は原作よりややスピード感で劣るが、ノートの使用が回想から現在形に切り替わり導入としては幾分スッキリした印象。エヴァの新劇と似た系統の改変。でもよく考えると、高校生が暗い部屋で独り言しゃべってるだけの内容で数分も引っ張ってたり。
しかしアニメ化する意義がないかといえばそうでもない。動きがある分心理戦が理解しやすくなっているのも事実。でも代償としてオカシイ点も浮き彫りになってる。そしてそんな箇所に限って全力で演出する製作陣。バカ野郎。
登場人物の過去を掘り下げて話を水増ししないのも特徴。「退屈だから」「新世界の神になる」の二言でストーリーを切り開いていく潔さは、おなじダークヒーローであるシスコン疑惑の帝国皇子といい勝負。
しかし実質3クールは長丁場すぎたか、原作同様に2部以降は…。井上・米村と特撮業界の人間が脚本やってるので、もしやと無印『ハガレン』的な改変を期待したが…
主役は当時若手の宮野守、平野綾。そしてまさかの中村獅堂。演じた死神曰く、デスノートに関わった人間は不幸になるらしいが、その年の彼は…
しかし思ってたより上手い。上手いけどガラ声のおかげで、誰だよお前感がすごい。
主題歌は自分の解釈とズレがあってイマイチ。後期のオープニングアニメは全力でいいんだけど、さすがに真面目に観てる人をバカにしすぎな気が。
・総評
売れた割には異質な要素で埋め尽くされていた感のある新世界アニメ。
「このノートに名前を書かれた人間は、死ぬ」という強烈な一節が、ダークな世界観と一歩手前のバカさ加減を端的に表している。
知識がいるようで実は頭カラッポにして楽しみたいエンターテイメント作品。